「たとえ10万人フォロワーがいてもバズらないと読んでもらえないのは確かです。だから誰かを批判したり強い言葉を使ったりという手法を取ってしまいがちなんですが、でもできればそこから距離を取って世の中がもう少し冷静に優しくなれれば。この本は装丁にも私の意見をだいぶ取り入れてもらって本屋さんで見ると飛び抜けて地味です。でも昔、演劇を習っていた時に先生に『みんなが大きな声を出している時は小さな声で話すと静寂ができて注目を集める』と言われて、それを本でもやりたいと思ったんです。小さな声にどれだけ人は合わせてくれるのかトライしてみたい部分でした」

 確かに、強い声、大きい声ばかりの中で小さい声を拾おうとすれば、静かにならざるを得ない。そして、多くの人が疲弊しているこの世の中では、その小さな声こそを必要としている人がたくさんいる。本書は発売6日で重版が決まった。

「たくさんの人に手に取ってもらって本当に涙が出ました。この本は今の社会のムードに対しての課題を自分なりに解決していきたいと思って書いた本なので、これが自分のフォロワーだけでとどまっていたら何も前進していないし、課題解決になっていない。こういう本が受け入れられる社会をつくっていきたいと思っているので、この小さな声に気づいてもらえるような風が吹き始めているというのは本当にうれしいです」

(ライター・濱野奈美子)

AERA 2021年4月26日号