歌が誰かにとってのパワーになること、みんなが必要としてくれていることを痛感した。

「私にできることは歌うことだけ。私の生きがいは歌なんだと再認識できた機会だったのかなと思います。あと、表現力うんぬんに気を取られるよりも、楽しく歌いたいと思ったのは、当たり前にライブができなくなったことも大きかったかもしれない。思い切り声を出して騒げるライブはできていませんが、クラシックアレンジの静かなライブでも、お客さんの熱量が半端なかった。騒がなくても、叫ばなくても、楽しんでくださっていることは伝わってきたので」

 コロナ禍で苦しんでいる人、困っている人が多いことはわかった上で、コロナ禍だからこそ“本質的な何か”に気づけたような気もしている。そのことを、クリスタルさんは、「世界中の、いろんな角度からのクレンズ(cleanse=洗浄、浄化)」と表現した。

「自分たちにとって何が本当に大切なのかを誰もが考えた時期だったと思います。困っている人を思いやるとか、当たり前のことに感謝するとか、環境を見直すとか。今は、人類全体が別の次元にシフトしなければならない時期なのかも。いろんな不正や過ちが暴かれているのも、これまでの膿(うみ)を出しているのかな、と」

(菊地陽子 構成/長沢明)

クリスタル・ケイ/1986年生まれ。99年デビュー。「Boyfriend −part II−」「恋におちたら」などのヒット曲でブレーク。2015年にCrystal Kay feat. 安室奈美恵「REVOLUTION」、「何度でも」を含むロングヒットアルバム「Shine」をリリース。19年アーティスト活動20周年を迎え、トニー賞4部門受賞のブロードウェーミュージカル「PIPPIN」の日本版にも出演。読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。

>>【後編/クリスタル・ケイ「J‐POPを全力でリスペクト」 カバー楽曲の制作秘話】へ続く

週刊朝日  2021年4月30日号より抜粋

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