駅舎や跡地を「道の駅」として活用した事例もある。

 JR西日本から第三セクターで引き継いだ、のと鉄道の穴水と蛸島を結ぶ能登線(61キロ)は、05年に廃止。石川県珠洲市にある珠洲駅も廃止されたが、駅舎を建て替えて10年に「道の駅すずなり」としてよみがえった。

 道の駅には、プラットホームと一部の線路が残っている。同市と金沢市を結ぶ都市間バスや、路線バスのターミナル拠点となっただけでなく、地元産品の販売所もあり、にぎわいを取り戻したという。

 廃線後の駅の活用として、「バスターミナルを整備する事例は多い」(鉄道経営に詳しい流通経済大学の板谷和也教授)。廃線になったトンネルでは、きのこ栽培をしている事例もあった。

 鉄道の駅は、旅行者にとってその地域を象徴する“玄関口”でもある。

「イメージが大事で、さびれていると思った人がリピーターになることは難しい。そこがきちんとしていないと、駅を残す意味がありません」(板谷さん)

 鉄道会社が、かりに赤字ローカル線の存続が難しいと判断しても、廃止するにはお金がかかる。一方で、鉄道設備の更新投資などにお金を回したり、安全対策を進めたりしなければならない。

「お金は限られています。例えば1億円のお金があれば、病院や保育園をつくれるかもしれません。その地域にとって何が幸せなのか考えたほうがいい」

 杉山さんは強調する。

 今回の新型コロナをきっかけに、身近な路線の将来をひとごとと思わずに、考えてみたい。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2021年4月30日号より抜粋

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