社会的にも評価されてきた柔道の段位証書。その価値は今後、変わるかもしれない(撮影/写真部・岡田晃奈)
社会的にも評価されてきた柔道の段位証書。その価値は今後、変わるかもしれない(撮影/写真部・岡田晃奈)
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 問題が立て続けに明るみに出る柔道界で、強さの象徴である「段位」をめぐって、不透明な慣行やカネの流れが見えてきた。進学や就職で評価されるなど、段位は社会的に認められた「資格」だ。しかしその内実にはずさんな部分がうかがえ、関与する団体の公益性にも疑問符がつきかねない。

 そもそも、剣道なら全日本剣道連盟、将棋は日本将棋連盟、珠算だと日本珠算連盟というように、他の多くの競技・技能では、一般的に通用する段位は、その種目の全国組織が審査や認定に当たっている。では、柔道は全日本柔道連盟(全柔連)かというと、違う。認定するのは、柔道の創始者・嘉納治五郎が開いた講道館(東京)だ。競技団体ではなく、「家元」が段位を管理し続けている(外国では、その国や地域の柔道団体が認定)。

 ただ、審査の実務を担うのは、全柔連傘下の地方団体だ。講道館は、各地の柔道連盟や柔道協会など全国111団体に、段位取得候補者の「推薦」を委託。各団体は審査会を開き、試合や形(かた)の演技の結果などをもとに候補者を推薦する。その推薦を講道館が審議し、段位を認定する。

 この、審査と認定の主体が別々なことが、柔道の段位制度を不可解にしている。

 格好の例が、地方によって段位取得の費用が違うことだ。例えば埼玉県柔道連盟の審査を受け「合格」(連盟が講道館に推薦)した場合、初段なら1万8800円、2段1万2500円、3段1万5200円を払う。初段が高いのは、講道館の入門料(8千円)と同県柔連の入門料(1500円)を別途取られるからだ。一方、石川県柔道連盟の審査で合格すると、初段2万2千円、2段2万3千円、3段2万7千円を納める。2段と3段は、埼玉県柔連より1万円以上も高い。5段になると、その差は約2万5千円に達する。

 地域によって、受験者数や会場代、審査員(地域の高段者)たちへの日当、事務経費などは違う。それを鑑みれば、料金に差があるのはもっともかもしれない。だが、「資格」という点で考えると、地域によって費用に大幅な違いがあるのは、不公平ではないのか。

AERA 2013年6月10日号