商品をプロデュースするときもファンに意見をきいて一緒に作る。企画会議を生配信して千人もの人が参加することも。コアなファンの獲得はライブコマースでの結果につながっていく。
「ライブコマースは視聴数より、どれだけコアなファンと密にコミュニケーションをとれるか。自分がいいと思った商品をみんなもいいと思ってくれて、物が売れるのが楽しい。ファンの子の反応がやりがいですね」(同)
■“ももち買い”が続出
企業からの依頼は急増しているが、受けるのは2割程度。生配信は嘘がつけないから本当にいいと思うものしか扱えない。
18歳からアイドル活動をしていたが、脱退しニートになった。家賃2万9千円のアパートに住み、工場でシールを貼るバイトをした時期も。その後、アパレルの販売員になり、インスタを始めたら、半年でフォロワー数が1万に。販売員をやめて好きな服やコスメを紹介するうちに、取り上げたものが売れ始めた。
「売れる=相手の心を動かせたことだと思っているので、その感覚がうれしくてライブコマースにのめり込んでいきました」
コメントには「ももち買いしたよー!」と元気な言葉が並ぶ。人を楽しませていたアイドル時代の経験が今生きている。
ももちさんのように主にSNS上での発信によって、消費を牽引し、流行を作り出すインフルエンサー。彼らが、特に「Z世代」と呼ばれるデジタルネイティブ世代に与える影響力は絶大だ。
SNSマーケティング事業を展開するサイバー・バズの海野(うんの)萌さんは、Z世代とインフルエンサーの関係についてこう話す。
「Z世代にとって、SNSはトレンドを追う必須ツールです。中でもTikTokは新しい発見やトレンドを探すために利用されることが多い。バズっている動画をいち早くマネして、移り変わりの早いSNS内のトレンドに乗ることが重要です」
SNSでバズったものが流行とみなされる。いまやZ世代の流行は、SNSやインフルエンサー抜きでは起こらないという。
「好き」を突き詰める姿勢や個性も、Z世代を引き付ける。
「好きを突き詰める姿にあこがれたり共感したファンは熱狂度も高く、コアなファンになる傾向があります」(海野さん)
(編集部・川口穣、ライター・仲宇佐ゆり)
※AERA 2021年5月3日-5月10日合併号より抜粋