そして、久世の死後にもこんな話をしている。
「だけど、久世さんにも言ったんだけど『ああいうことがなかったら、あなた本書いてないよ』って。『うん、まあな』って言ってた。やっぱりああいうきっかけでTBSを辞めることができたわけよ」(「hon-nin」)
実際、久世はこのスキャンダルを機に独立して制作会社を立ち上げ、文筆活動でも高い評価を受けた。久世の才能を惜しみ、のぐちの幸せを考えての公表でもあったわけだ。第三者が告発することによって、最後は丸く収まったともいえる。
思えば、前出の聖子の件にしても、暴露した男性たちはその見返りとして金銭などを得ている。一方、聖子はそれをスルーすることで打たれ強い大物感をさらに高めた。
大衆の判官びいきが行き過ぎると、誰かひとりを不幸にしてしまうおそれがある。むしろ当事者たちに任せることで、それぞれがそれなりに幸せでいられることもある気がするのだ。
とはいえ、他人のトラブルに首を突っ込むのは楽しいし、正義感に酔えたりもする。それが法に触れそうなことなら、断罪もしたくなるだろう。ただ、そこは警察や裁判所といったその道のプロに委ねて、大衆も、そしてメディアもそれなりの節度を持ってなるべく向き合いたいものだ。
曖昧な結末をたどりそうなこの「枕営業」騒ぎが、もしかしたらその転機になるかもしれない。
●宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など