大学全体の就職率は98.6%(20年3月卒)。全国平均の89.5%(厚生労働省などの調べ、今年2月1日現在)を大幅に上回る。就職先は主にメーカーなどで、学部生の4割弱、大学院生の6割弱を資本金10億円以上の大規模企業に送り出す。大学入学共通テスト利用の受験料(通常1万5千円)を免除にしたことなどのほか、面倒見の良さも人気の理由だ。こうした成功の要因の一つが「新興」学部の誕生だった。
■地方からの受験生減少
そもそも、なぜコロナ禍だと志願者数は減るのか。大学通信の井沢秀・情報調査部長は言う。
「オープンキャンパスや説明会がなくなり、併願する大学や学部を例年より選びきれなかった受験生が多かった。さらに感染リスクを考慮して地方から首都圏、関西圏の大学を受験する生徒が減少。私立大は大都市圏に多く、特に影響を受けました」
その中で増えた学部もある。大学通信のデータ(志願者数上位60大学の一般選抜が対象)によると、前年比で最も伸びたのが桜美林大航空・マネジメント学群(20年設置)で188%。そのほかにも06年以降に設置された新興学部が健闘している。
「新しい学部は大学側も失敗はできないと力を入れます。企業と組むなど他の大学にはない特徴ある学部も多く、志願する受験生は多いです」(井沢さん)
国公立大にも新学部ができている。18年、首都圏で初めて設置された横浜市立大データサイエンス学部は前年比138%の志願者を集めた。学部1期生となる4年生の渋谷雅樹さん(21)は言う。
「高校生のとき、大学の説明会で数学や統計学で未来を予測できると聞いてデータサイエンスを学んでみたいと思いました」
■多方面に就職が可能
同学部は現場重視。様々な分野に精通する教員がそろい、学生は企業や行政、学校などに足を運び、データをどう使って課題を解決するかを実践的に学ぶ。たとえば教育現場では学習指導要領の改訂に伴い、思考力や判断力などをどう評価するかが課題となっている。統計調査が専門の土屋隆裕教授はこう話す。
「難しいが、大事なのは現場の課題を見つけ、それをどうデータにしていくか。単なる技術者でなく、データを通して課題解決できる人材になってほしい」
佐藤彰洋教授によると、4年生48人への調査から、40%が大学院への進学希望で、就職希望は50%余り。そのような中、学部主催企業説明会へ5社が参加を表明した。インターンシップを経験して「内々定」を得た学生もいる。就職活動中の4年生、安庸汎さんは言う。
「マーケティングや統計を学んだ経験を生かせる専門商社もいいし、プログラミングができるのでIT企業でも働ける。教育現場もいい。行ける業界や職種が様々あると感じています」
(編集部・深澤友紀)
※AERA 2021年5月17日号より抜粋