声を上げた楽天の三木谷会長や錦織圭選手(C)朝日新聞社
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 新型コロナウイルスの感染拡大が収束せず、東京五輪開催に向けて賛否両論の意見がある中、アスリートも様々な葛藤を抱えている。

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 世界各国のメディアに大々的に報じられたのは、プロテニスプレイヤー・錦織圭の発言だった。5月10日のシングルス1回戦でファビオ・フォニーニに勝利した後の記者会見で東京五輪について質問されると、「出ないという選択肢は、なかなか難しいです」とアスリートとして出場を望む気持ちがあるとコメント。一方で、「死人が出てまでも行われることではないと思うので。究極的には1人もコロナの患者が出ない時にやるべきかなとは思います」とコロナの収束が見えない状況で五輪が開催されることに疑問を呈した。

 錦織は昨年8月に新型コロナウイルスに感染している。細心の注意を払った中で感染して辛い思いをしただけに、その言葉には重みがあった。

 また、08年の北京五輪柔道男子100キロ超級金メダリストで総合格闘家の石井慧が11日に自身のツイッターを更新。錦織が東京五輪開催について語った発言に対し、「競技により五輪の立ち位置は違う。テニスやゴルフなどはプロも確立されているし五輪と並ぶ名誉も何かあるだろう。五輪の為に命を削り名誉と金のために命をかけてる選手は世界に沢山いる。だからこんな綺麗事を言うな」と反論。

 しかし、「俺が(五輪開催を)反対している理由は全く違って自分が1番可愛いからにつきる」と続けた。

 石井が錦織に反発した形で話題になったが、コロナの感染が収束しない中で東京五輪を開催することに疑念と不安な思いを抱えている考えは一致している。

 菅政権にとってこうした流れは思わぬ誤算だったという。

「五輪への出場が有力視される選手たちが開催に懐疑的な見方を示すと菅政権は思ってもいなかった。ただ、錦織選手の一連の発言は正直な気持ちで共感したアスリートも多いと思います。アスリートたちは国民に応援されることが大きなモチベーションになり、心の支えになる。その前提が崩れて開催に反対の声が高まると、出場に複雑な思いを抱くのは当然でしょう」(政治部記者)

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政権の誤算とは?