「黒人差別の問題について、最初は話さないほうがいいと思っていました」――J-POPのカバーで人気を博し、NHK紅白歌合戦にも出演したアメリカ出身の歌手、クリス・ハートさんはこう語る。白人警官による黒人男性暴行死亡事件に端を発する“Black Lives Matter”が世界中で巻き起こるなか、クリスさんがいま、日本人に伝えたい思いとは。
【写真】「アジア人として差別を受けた」と声明を発表した、人気男性アイドルグループは…
* * *
バスケットボールの八村阿蓮選手(東海大学)がSNSを介し、自身と兄の八村塁選手(NBA・ウィザーズ所属)に対する人種差別的なメッセージを送られた事件は記憶に新しい。阿蓮選手は「日本には人種差別が無いと言ってる人がいるけどこうやって人種差別発言をする人がいます。晒してどうにかなる問題では無いと思いますが、皆さんに今一度人種差別の問題について関心を持っていただきたいと思いました」とコメント。これに対しSNS上では数多くのメッセージが寄せられ、日本における人種差別について様々な意見が交わされた。
“Black Lives Matter”(BLM)以降、世界中で繰り広げられた人種差別に抗議する運動。それは日本でも確実に広がり、芸能界、スポーツ界でも、積極的にメッセージを発信するケースが増えている。クリス・ハートさんもその一人だ。
1984年、アメリカ・サンフランシスコ出身。10代の頃からJ-POPを歌っていたクリスさんは、2009年に来日し、13年にメジャーデビューを果たした。NHK紅白歌合戦に出演し、日本武道館公演を成功させるなど、日本の音楽シーンで確実にキャリアを築き上げたクリスさん。日本人女性と結婚し、17年に日本国籍を取得したクリスさんは、BLMについて発信した理由について、「黒人として力になれることがあると思ったから」と語る。
「最初は正直、話さないほうがいいと思っていたんです。でも、いろいろな芸能人の方がBLMの情報をシェアしはじめたことで考えが変わってきて。彼ら、彼女たちは黒人として差別された経験がない。僕はアメリカ育ちで、そういう問題も経験しているので、自分の口から説明したいと思いました」