筒美京平トリビュートコンサート当日、僕は有楽町の三省堂書店に立ち寄った。「松本隆 作詞家50年『僕が出会った天才作曲家たち』」が掲載の文藝春秋を抱え会場に入ると、なんと松本隆さんが席に座っていた。「お久しぶりです」と挨拶したあと、僕は松本さんの歌詞が歌われる同じステージを、松本さんご本人と観たのだ。

 終演後、「弾き語り(太田)裕美でダムが決壊。あんな苦労とか大ヒットしたねとか、50年分の記憶がまとめて天から降ってきた」と松本さんは語っていた。涙腺崩壊は僕も同じだった。ステージでは、斉藤由貴が1985年のデビュー曲『卒業』のラストで目を潤ませていた。たぶん、聴衆とシンガーの涙は、作曲家筒美京平からの「ありったけの愛」のひとかけらだった。

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞

週刊朝日  2021年5月28日号

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?