
![(左から)佐々木健吾(ささき・けんご、33):松井証券マーケティング部で株式、投資信託などの投資サービス関連業務に従事。初心者向け資産運用にも強い/田嶋智太郎(たじま・ともたろう、57):経済ジャーナリスト。現三菱UFJモルガン・スタンレー証券から独立。30年以上、相場を見続けてきた[写真/伊藤忍(佐々木さん)、本人提供(田嶋さん)]](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/0/9/840mw/img_09b37415a11edfec906f8ef4407a481d71849.jpg)
「25歳以下なら売買手数料はいただきません」。株式の売買手数料が主な収益源であるはずのネット証券が、出血サービスを打ち出した真の理由は。AERA2021年5月31日号の記事を紹介する。
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「株の売買手数料、25歳以下なら無料にします──」
4月20日、ネット証券3社で出たリリースだ。SBI証券と岡三オンライン証券は後日返金による“実質無料”、松井証券は返金制ではなく“完全無料”。学割ならぬ若者割? 導入の経緯を松井証券マーケティング部の佐々木健吾さんに聞いた。
「これまで50万円以下の株式取引に関しては無料でしたが、これから先、大きなライフイベントを迎える世代を応援するために始めました。『不安はぜんぶ、松井にぶつけろ』をコンセプトに特設サイトを設けてサポート体制を組んでいます」
松井証券全体の130万口座のうち、一番多いのは40代で約25%。若年層は多くないが、2020年は資産運用に興味を持つ人が増え、「20代の新規口座開設は前年比1.7倍に」。
■売買1位は三菱UFJ
株初心者は、この上昇相場でどんな銘柄を売買しているのか。「3月に口座開設し、『取引経験なし』と答えた人の直近3カ月間で取引の多い銘柄を見ると、1位が三菱UFJFG(フィナンシャル・グループ)、2位がENEOS(エネオス) HD(ホールディングス)、3位がオリックス。以下、セブン銀行、ANA、日本郵政、JAL……」
手堅い! トヨタ自動車やソニーなどの超有名株は最低投資金額が高すぎるせいか、30万円以下で買える銘柄が人気だ。
19年に米国のチャールズ・シュワブが株の手数料を完全無料化し、日本のネット証券でもさらなる値下げ戦争が始まった。最近は“○万円以下の取引は無料”と金額制限付きで落ち着いていたが、今度は年齢で刻んだ格好だ。経済ジャーナリストの田嶋智太郎さんは語る。
「第一印象は、若者の獲得競争、いわば“囲い込み”ですね。証券会社に口座を開いて入金した後、別の会社に資金を移動したり複数社を併用したりするのは面倒ですから。とにかく口座を開いてもらって、最初は手数料タダでいいから投資を始めてほしいということでしょう。そこへ素直に乗るのも悪くない」