信託銀行などに専用口座を開設し、お金を振り込む。学校の入学金や授業料、留学渡航費、塾や習い事の月謝など、教育資金の範囲は幅広く認められているが、実際に使ったことを示す領収証などを提出し、金融機関がチェックしたうえでないとお金を引き出せない。

 確かに、これなら孫の教育資金以外に使われることはなさそうだ。先の廿野氏によると、ある富裕層の祖母はこう言い放ったという。

「現金贈与だと、お嫁さんのダイヤモンドになってしまうかもしれないからね。だからこの制度で1500万円の満額を贈与するのよ」

 しかし今回の100万円では、この制度をすすめる声はなかった。廿野氏が、「手続きがいろいろ面倒であることを考えると、少額とはいいませんが100万円では費用対効果のつり合いが取れていません」と言えば、教育資金に詳しいFPの竹下さくらさんも、

「信託銀行は全国津々浦々に支店があるわけではありません。いちいち交通費がかかる点を考えてもすすめられません」

 教育資金贈与信託は、どちらかといえば富裕層向きの制度のようだ。ただし、2人に先の風呂内さんも加わって、声をそろえてこう言う。

「教育資金は、必要になったときにそのつど贈与すれば、もともと非課税なんです。それを使って、教育資金はこまめに贈与すればいい」

 そうなのだ。祖父母を含む扶養義務者から生活費や教育費が贈与された場合、通常必要と認められるものには贈与税はかからないのが法律の決まりなのだ。ただし、渡した生活費や教育費は使ってしまわないといけない。そのお金を預金したりすると贈与税の対象になってくるから注意が必要だ。

 なお、教育資金贈与信託と似た制度で、結婚子育て資金に使い道を限定した「結婚・子育て支援信託」もある。大きくなった子供向けで、こちらは1人1千万円までが非課税。問題点もほぼ同じだが、「どうしても結婚・子育てに使ってほしい」という祖父母には選択肢になるだろう。

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