作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、立憲民主党の「性犯罪刑法改正に関するワーキングチーム」での議論について。男性議員が「14歳との性交、同意で捕まるのはおかしい」と発言。のちに謝罪・撤回したが、こうした発言が出てくる背景と性暴力被害の現実との落差について考えた。
【写真】小学6年生の男児と性交渉した23歳のシングルマザーは有罪判決に
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14歳のときに幼いいとこと海辺で遊んでいたら、知人のおじさん(当時、30歳くらい)にボートに乗ろうと誘われた。家族ぐるみでつきあっている男性だったので、警戒心もなく乗ったのだが、おじさんが語ることの多くが、私の容姿について一方的な感想だったり、好きな人はいるのか? というような質問だったりするなど、秘密めいた「男女」の空気を濃厚に出され困惑した。それなのに、どんどん暗くなる私の顔を見て「明るくしてた方がカワイイよ」などと楽しげに上から目線でおじさんはますます上機嫌になり、「高校生になったらデートしよう」などと目を見つめてくるのだった。オジサンの“優しい”笑みは、ただ薄気味悪く、私は3歳だったいとこの頭をなで続け、曖昧な表情で曖昧に相づちを打ちながら時が過ぎるのを待った。
16歳のとき、近所のスーパーでアルバイトをはじめた。アルバイトの初日、50代の店長に、「包丁さばきを教えよう」と言われ、背中にぴったりと密着され、手を握られ魚を一緒にさばいた。体が硬直し、「やめて」と声を出すこともできなかった。なによりおじさんは“優しく”、甘い雰囲気たっぷりで気持ち悪かったのだが、それゆえに私は自分のされていることがとっさに言語化できず、声が出なかった。アルバイトは1日で辞めた。
中学生や高校生のとき、私の周りの女の子の多くが似たような体験をしていた。自分にその気はないのに、一方的に境界を破って侵入してくるヤツラ。ヤツラは楽しげで、“優しく”て、一方的で不気味な大人たちだった。「オレがいろいろ教えてあげる」と悦に入っていたのかもしれない。彼らにとっては気軽なお遊びだったのだろう。ともすれば恋愛(性的な関係)に発展する可能性もあるのではないかと、期待していたのかもしれない。