指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチ。連載「金メダルへのコーチング」で選手を好成績へ導く、練習の裏側を明かす。第72回は、「『中と外』の情報共有」。
【写真】ジャパンオープンの男子400メートル個人メドレーで優勝した瀬戸大也選手
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競泳日本代表チームは5月31日から6月6日まで第2次合宿を行いました。
4月の五輪代表選考会直後の第1次合宿を終えてから所属チームで強化を続けてきた選手、コーチ、スタッフが久しぶりに顔をそろえて、コミュニケーションを深めていきました。
合宿期間中に日本代表チームとしてジャパンオープン2021(3~6日、千葉県国際総合水泳場)に出場して、五輪本番を想定したチームとしての動き方も確認しました。チーム内の役割分担をしたコーチから選手に話をしてもらい、結束力が高まる合宿になったと思います。
第1次合宿から私がヘッドコーチとして心がけているのは、選手、コーチ、スタッフに対して、その時点でわかっている情報を、できるだけ早く正確に伝えていく、ということです。
今回の代表チームのコーチは私も含めて11人です。第2次合宿が終わると選手たちは所属チームに戻って練習します。五輪直前に代表チームに合流して、選手村に入って11人の代表コーチのもとで五輪のレースに出場します。代表チームのコーチは、選手村に入っていない代表選手輩出コーチと十分に情報交換することが、極めて重要です。
これまでの五輪では、代表チームの「中と外」という言われ方もしましたが、今回はできるだけ垣根を取っ払いたい。その前提として、迅速な情報の共有化を進めているわけです。
新型コロナウイルスの感染拡大にともなって、オンライン授業や会議が急速に普及しました。代表チームでもこの「不便な世の中で普及した便利な道具」を使っています。報道されたように5月に代表選手の一人から新型コロナウイルスの陽性反応が出たときも、すぐにコーチ間でオンラインミーティングを開いて選手の健康状態を聞いたり、感染拡大防止策を確認したりしました。代表チームの入江陵介キャプテンにも連絡して、ソーシャルネットワーク(SNS)を使って、選手に体調管理の徹底を呼びかけてもらいました。