日本では信教の自由が憲法で保障されている。どんな信仰を持とうと自由である。だが、親の宗教によって、その子どもが苦しんだり、人生の選択を制限されたりするケースがある。その教義が世間の常識と相いれない特殊なものであるほど、子どもは苦悩し、生きづらさを抱えることが多くなる。いわゆる「カルト(※)2世」問題だ。AERAdot.では「カルト2世に生まれて」として、親の信仰によって苦しんだ2世たちのインタビューを短期連載する。
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※カルトは「宗教的崇拝。転じて、ある集団が示す熱烈な支持」(大辞泉)とあり、本稿でもその意味で使用している。親が子に信仰の選択権を与えないほどに熱狂的な信者であり、そうした家庭環境で育った子どもを「カルト2世」と定義している。当然ながら、本稿は教団の教義や信者の信仰を否定するものではなく、一部の2世が感じている“生きづらさ”に焦点を当てることを目的としている。
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「私は両親の宗教がなかったら、ありえなかった命です。だから生まれ育った環境が“普通”で“当たり前”だと、ずっと思って生きてきました。でも、宗教のない家だったらよかったのにな、と他の子の家がうらやましかった……」
田代まゆみさん(39・仮名)は、自身の子ども時代をそう語る。
まゆみさんの両親はある教団の信者で、まゆみさんは生まれた時から教団の影響を受けて成長した「カルト2世」だ。
カルト2世として生まれた子どもは教団の教えと、その特有の価値観に基づいて育てられるため自分で環境を選べない。そのため友人関係や恋愛、部活動、学校行事、進学・就職、結婚など人生におけるさまざまな場面で、自分の意思とは異なる選択を強いられたり、葛藤や苦悩を味わったりすることが多い。
こうした違和感や生きづらさは、これまであまり外に向けて語られることはなかったが、SNSの発達により2世同士の交流の場を持てるようになり、当事者同士が本音を漏らせる環境が少しずつできてきた。それに伴い、ここ数年は「カルト2世」たちの内なる叫びをつづった漫画や手記なども出版され、ドキュメンタリー番組などでも扱われるようになったことで世間の認知も広がりつつはある。