■労務管理の穴を埋める

 オフィスとしての機能も充実している。1人で仕事に集中する「執務スペース」を軸に、「ミーティングスペース」「ラウンジスペース」で構成する。執務スペースとミーティングスペースはあえて離れた位置に配置する。これも雑談の機会を増やすためだという。

 また、エリアを区切ってその中の人たちだけで会話したり、出社中の人から任意の人を選んでグループを作って会話したりもできる。

「普段、オフィスのどういう場面で雑談しているのかを考えたとき、自分の席から会議室に入るまでに連れだって歩いたり、すれ違ったりする動きは不可欠だと気づいたんです」(同)

 クリック一つでポンと移動するのではなく、面倒でも自分の席からカーソルキーとマウスを使って、「歩く」感覚で移動する。無駄にも思えるオフィス空間内を移動する時間は雑談につながる貴重な要素なのだ。

 会議もリアルに近い感覚を味わえる。例えば、「Zoom」でも参加者の表情は分かるが、視線の先までは読み取れない。それも「XD SPACE」なら、誰に向かって話しているか全員に伝わる。

 顔が見えるアバターが「出勤」することで、テレワークの穴ともいえる労務管理も容易になる、と柴原さんは言う。

「テレワークの場合、勤務管理が極端な拘束か放置のどちらかに二極化してしまう傾向がありますが、バーチャルオフィスに出勤するアバターの表情や動作を読み取ったり、出退勤を把握したりすることで管理もしやすくなります」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2021年6月21日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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