当面は細かなルールはつくらず、ゴミ捨てや掃除などは宮本さんたちの自発的な協力に任せている。問題が起きれば、そのつど解決していく考えだ。
セーフティネット住宅を制度化した改正住宅セーフティネット法は、2017年に公布された。登録物件は全国に6万件ほどあるが、大多数は一般の人も入居できる物件で、住宅確保要配慮者の専用物件は2848戸にとどまる(6月4日現在)。
共生ハウス西池袋は、住宅確保要配慮者の専用物件としては、豊島区内で2番目だという。
総務省の住宅・土地統計調査(18年)では、全国に空き家は約849万戸ある。これらがなかなかセーフティネット住宅に結びつかない背景を、空き家活用株式会社(東京都港区)の和田貴充社長(44)は次のように解説してくれた。
「オーナーの不安がハードルになっています。生活困窮者への賃貸で家賃が滞納されたり、高齢者が孤独死して“事故物件”となったりすることを避けたいと考える人もいます。近隣住民とのトラブルを危惧する声もあります」
社名のとおり、同社は1都3県、関西圏、中京圏を中心に空き家情報を独自に調べてデータベース化。「AKIDAS」というサイトで紹介している。
経済的な理由などから、住まいを見つけるのが困難な人たちに空き家を提供するのは、一見理にかなっているように思えるが、必ずしもうまくいっていない。
自治体での取り組みもあまり進んでいない。和田さんによると、空き家一つとっても、複数の部署が関わっているため連携しにくく、ここに住宅確保要配慮者を担当する部署が加われば、さらに連携は難しいためだ。
「共生ハウス西池袋のある豊島区のような例は、ほかに聞いたことがない」。そう和田さんは話す。
一方で、生活困窮者に空き家を改修して貸し出す、独自の取り組みを始めている会社もある。京都府京田辺市にあるリノベーターだ。社長の松本知之さん(41)は10年ほど前に個人で購入した空き家を高齢者に貸したことをきっかけに、低所得者や生活保護受給者、外国人などに空き家を提供するビジネスを始めた。
3年前に法人化し、現在は大阪や京都を中心に松本さん個人が持つ約20物件のほか、法人で約70物件ほどの空き家を買い取り、最低限のリフォームをして生活困窮者らに貸し出している。