石川のパワーカーブ、栗林のフォークは変化が大きく、見た目にも分かりやすいボールだが、その一方で変化は小さくても凄い変化球も存在している。現役の代表例では唐川侑己(ロッテ)のカットボールになるだろう。先発を任せられていた頃はどちらかというとカーブに特徴があるオーソドックスなタイプだったが、リリーフに転向してからカットボールを主体としたピッチングにモデルチェンジして見事な復活を果たした。

 フォームもボールの軌道もストレートと同じで、打者の手元でほんのわずかに動くため、スロー映像で見ないと分からないこともあるが、逆にそのわずかな変化が打者にとって厄介なものになっていることは間違いない。スピードは140キロ台中盤をマークし、インコースにもアウトコースにも投げ分ける精度の高さも大きな武器だ。中堅、ベテランに差し掛かったタイミングで一つの球種がその投手の選手生命を伸ばす例は過去にもあったが、唐川にとってはカットボールがそのボールになったと言えるだろう。

 他にも今シーズン売り出し中の選手では橋本侑樹(中日)のスライダー、佐々木千隼(ロッテ)のシンカーも面白いボールだ。メジャーで活躍する日本人ではダルビッシュ有(パドレス)が多彩な変化球で有名だが、その投げ方や練習の様子をYouTubeで公開しており、そういった取り組みも全体のレベルアップに繋がっていることは間違いない。今後も見るものを驚かせるような魔球を操る投手が更に登場してくることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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