いま座っているカフェや自宅の住所、インスタの写真を撮影した場所──。スマホに収められた様々な情報の保護に、ITの巨人がようやく動き出した。 スマホの個人情報保護機能が強化される AERA 2021年6月28日号から。
【写真】中国・上海の地下鉄で展開されたOPPOのスマートフォンの広告
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米アップルは6月初めに開いた世界開発者会議(WWDC)で、iPhoneの基本ソフト「iOS」の最新版に、どのアプリがいつ、どんな個人情報を利用したのか容易にわかる機能を追加すると発表した。
スマホのアプリはGPSによる位置情報をはじめ、連絡先や写真などの個人情報にアクセスすることで、利便性や機能を高めている。秋にリリースされる予定の次期OS(iOS15)では、アプリがこうした情報に何回アクセスしたのか棒グラフで明示されるようになる。この画面を確認することで、例えば「連絡先」の情報が必要ないはずのアプリが、勝手にアクセスしていた、といった不審な事案を把握しやすくなるわけだ。
「プライバシー保護は、基本的人権の一つだとアップルは信じている」
WWDCの基調講演で、クレイグ・フェデリギ上級副社長はこう宣言した。
なかでも注目を集めたのが、音声アシスタント機能の「Siri」がインターネットにアクセスしなくても、端末内で音声を認識する方式にしたことだ。以前はSiriに話しかけた音声をサーバーに送り、そこで解析した情報を端末に返していた。しかし、その間に盗み聞きされるのではないかという不安が利用者の間で高まっていた。そうした声に押されて、アップルは端末内で完結する仕組みを取り入れたという。
■巨人も押し切られる
米グーグルも、スマホ用OS「Android」でほぼ同じ方向性の対応を検討している。
サミール・サマット副社長は5月の開発者会議で、「一人ひとりの利用者への対応、個人情報の保護、そして機器間連携の強化が柱となる」と説明。今秋リリース予定のAndroid12では、位置情報やカメラ、マイクなどの情報を、アプリがいつ利用したのか表示されるようになるという。
また、グーグルは、サイトの閲覧履歴を把握して個人に適した広告出稿などに活用する「Cookie(クッキー)」の利用を、自社ブラウザーで制限する方針をすでに示している。グーグルはこの技術を使った広告が収益の大半を占めてきたが、世界の個人情報保護の勢いに押し切られる格好となっている。