春風亭一之輔・落語家
春風亭一之輔・落語家
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 落語家・春風亭一之輔さんが週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「次男」。

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 わが家にも次男がいる。子供が出てくる噺に入るマクラでは必ずうちの次男の話を振ったりしてたので、私の落語をよく聴く人にはお馴染みの彼である。

 出産時。長男はかなりの時間を要したが、それに比べれば次男はあっという間だった。それでも家内は大変だったろうけど。取り上げられ、外に出てきた瞬間に次男がオシッコをした。いい曲線の弧を描いて。シャーッと。初対面からいきなり笑わせてくれた次男。とりあえず元気で生まれてきて良かった。

 小さいころはまぁよく泣いていた。三つ違いの兄弟。やっぱり兄貴は弟ばかり可愛がられて悔しかったりするのだろう。気持ちは何となく分かるが。意地悪されたりすると次男は大きな声で「にいにいにやられたー! ギャー!」と泣いた。泣き過ぎたのか、ちょっとハスキーボイスになってしまったが、なかなか味のある声だと思う。

「(兄を)やっつけるために、オレはやる!」という不純な動機で保育園の年少時に空手を始めた。通ってるうちに兄貴も始めた。空手教室の館長いわく「決して喧嘩には使ってはならぬ」とのこと。館長が怖かったのでやっつけることは出来なかったが、腹筋がみるみる割れてシックスパックに。集中力は凄い次男。

 8歳のときか。ウルトラセブンの怪獣「エレキング」のソフビ人形が欲しい、と言う。いつものこと。「もうちょっと大きくなったらなー」みたいなかんじで受け流した。「どれくらい大きくなったら!?」「そうだなー……赤ちゃんの歯(乳歯)が生え変わったりさ……もうちょっと自分のことがちゃんと出来るようになったら……」と言い終わらないうちに、次男はそのときグラついていた乳歯を掴んで自ら引っこ抜いた。「はらひへ。はは、ふへたよ(ほら見て。歯が、抜けたよ)」。買いましたよ。エレキング。約束だから。そこまでされたらしょうがない。わが子ながら天晴れ。

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