文部科学省の「大学入試のあり方に関する検討会議」は6月30日、1年半にわたる議論を終えた。これを受け、大学入学共通テストへの「英語民間試験」と「国語・数学の記述式問題」の導入について、文科省は今夏にも正式に断念する見通しだ。制度の不備について問題提起をしてきた、識者たちはこの結果をどう見るのか。元高校生の丹野健さん、京都工芸繊維大学教授の羽藤由美さん、東京大学名誉教授で広尾学園中学校・高等学校校長の南風原朝和さんに聞いた。
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「後輩たちが問題の多い制度に巻き込まれずに済むことになって、まずは安心しました」
2019年の文部科学省前でのデモなどを通して、大学入学共通テストへの英語民間試験と国語・数学の記述式問題の導入に反対の声を上げてきた、元高校生の丹野健さん(19)は胸をなでおろす。
文科省が設けた「大学入試のあり方に関する検討会議」は6月30日、1年半にわたる議論を終え、次のように結論づけた。
「2025年以降の共通テストへの、英語民間試験の活用と、国語・数学の記述式問題の導入の『実現は困難』」
同会議は近く提言を提出。これを受け文科省は今夏にも正式に導入を「断念」する見通しだ。
「英語民間試験」と「記述式問題」は当初、入試改革の二枚看板とされ、今年の第1回共通テストに組み込まれる予定だった。しかし、英語の民間試験については居住地によって選べる試験に差があったり、受験料も試験によってまちまちで試験機会や事前の「練習受験」の有無や回数が家庭の経済力に左右されたりするなど、「公平性」に問題があった。記述式についても50万人分の採点の「公正性」が担保できないなど、さまざまな制度の不備が指摘され、19年、土壇場になって導入が見送られた。
同年末、萩生田光一文科相のもと、「検討会議」が設けられ、新学習指導要領で学んだ高校生が受験する、25年以降の導入について改めて検討が重ねられてきた。前出の丹野さんは言う。
「英語民間試験も記述式も、だれが見ても実施困難なものでした。それをなぜ土壇場まで強行しようとしたのか。それがきちんと解明されないと、同じことが繰り返されると思います。専門家や現場の声に耳を傾けず押し通そうとした構図は、今のオリンピックの状況にも似ています」