さらに柔らかさが加わる。内角球を逆方向の左中間席に運ぶ本塁打も見たが、右ひじを実にうまく畳んでいる。腕の長い選手は、手が伸びた状態でスイングできない内角球をどうさばけるかがカギとなるが、あんなに柔軟に右ひじを使えたら、内角球も苦にならない。自分の体、構造などをすべて踏まえた上で作り上げたスイングだろう。

 投手目線で見ると、今は高めの球を有効に使おうとしているように見える。下から出ていくバットには高めは確かに有効だ。だが、大谷はこの球に対し、スイング軌道をうまく修正する術も持っている。強引に下から出てポップフライとはならない。内角も高めも通用しないとなると、最終手段はボールからストライクに入るような、大谷の想定にない球を投げるしかなくなってくる。

 メジャーの中に入っても、大きいと感じる。おそらく今、日本に戻ってきたら、もっと差を感じるだろう。1段も2段も上の存在となった。

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝

週刊朝日  2021年7月16日号

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