「本院には365日24時間使える自習室があるのですが、大学院の近くにアパートを借りれば、安心して利用してもらえます」

 キャンパス内にある付設保育園への入園支援、女性の指導スタッフを配置など、子育て中の社会人学生にも配慮した環境を整えている。自身も弁護士として活動する同大学院の後藤弘子教授は、女性弁護士の割合が低い弊害をこう話す。

「いちばんのデメリットは、クライアントのニーズに対する多様性がないことでしょう。たとえば離婚や性犯罪被害など、女性の依頼者が同性に相談したいと思っても、女性弁護士がいなければその希望に応えることができません。一般社会の男女比は半々ですから、女性がもっと増えてもいいはずです」

 現在同大学院は、女性学生の比率が30%を超えている。大学院開設以来ジェンダー教育に力を入れており、女性教員が18人のうち4~5人と、高い割合で維持できているのも、女性学生の比率を高くできている理由ではないかという。

 さらに女性の研究科長を過去に2人輩出しており、管理職として働く女性として、女性学生のロールモデルにもなっている。

「法曹界も未だ男性中心の旧態依然とした考え方の人が多いです。女性法曹を増やすために、法曹界が女性法曹養成の方策を積極的に提案するべきです」(後藤教授)

 中央大学法科大学院では、募集人員に、未修者コース5人、既修者コース4人を「女性法曹枠」として設けている。

 その狙いを担当者は「女性が活躍する社会の実現に向け、法曹者として社会に貢献したいという女性学生を増やしたい」と話す。

 さらにこの枠で合格した女性学生には、大学院が設置する特別給付奨学金の第一種(入学金を除く学費相当額)、または第二種(同半額)が給付される。

「女性法曹枠で合格した学生には社会人として経験を積んだ人もおり、中には異なる業界から30代以降に転身した事例もあります。そういう意欲のある女性を支援していきたい」(担当者)

(文・柿崎明子)

アエラムック『大学院・通信制大学2022』より

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