AERA2022年12月12日号より
AERA2022年12月12日号より

 このため、必ずしも正恩氏が好き勝手に何でも決めているというわけではないようだ。18年から19年にかけて行われた米朝首脳会談では、正恩氏は非核化に積極的な姿勢を示したが、側近に強くたしなめられ、最終的に会談は決裂した。

 朝鮮中央通信が19日に公開した「火星砲17」の視察写真には、側近と一緒に、発射に大喜びする金与正党副部長の姿も写っていた。与正氏は金正恩氏の実妹。18年に訪韓した際、目撃した韓国政府関係者は「非常に穏やかで、部下にも気配りをする人物だった」と語る。与正氏は米朝会談の事前準備も指揮したとされる。

 その与正氏が24日に発表した談話で、韓国の尹錫悦大統領を呼び捨てにし、「米国の忠犬」「あの大ばか」と口汚くののしった。南北協議に参加した経験がある韓国政府元高官は「与正は米朝協議を主導した責任がある。ロイヤルファミリーだから粛清されないが、責任を取る代わりに、強硬派の先兵として使われているのだろう」と語る。(朝日新聞記者、広島大学客員教授・牧野愛博)

AERA 2022年12月12日号より抜粋