北朝鮮の金正恩総書記(左)と妻の李雪主氏(右)、娘(中央)。朝鮮中央通信が配信した3人の写真を韓国のテレビが映し出した/11月19日、ソウル(ZUMA PRESS/アフロ)
北朝鮮の金正恩総書記(左)と妻の李雪主氏(右)、娘(中央)。朝鮮中央通信が配信した3人の写真を韓国のテレビが映し出した/11月19日、ソウル(ZUMA PRESS/アフロ)
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 北朝鮮のミサイル発射が続くなか、金正恩総書記が第2子の娘を初公開した。プライベートを公開する狙いは何か。2022年12月12日号の記事を紹介する。

【写真】娘と手をつなぎ「火星砲17」の試射を視察した金正恩氏

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 朝鮮中央通信は11月19日、金正恩朝鮮労働党総書記の娘の姿を公開した。娘は正恩氏によく似た顔立ちで、白いダウンジャケットを着ていた。韓国の情報機関、国家情報院は22日、娘が2013年に生まれた、正恩氏の第2子「金ジュエ」とみられると、国会情報委員会で説明した。北朝鮮は、金正恩ファミリーを日本の皇室のような存在にしたいのかもしれないが、それは危険な賭けになりそうだ。

■父親と手をつなぐ娘

 娘は18日、平壌近郊から発射された大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星砲17」を視察した正恩氏に同行した。公開された娘の写真には、母の李雪主氏と一緒に正恩氏のそばに立つ姿や、「火星砲17」を背に父親と仲良く手をつなぐ姿などが写っていた。朝鮮中央通信は27日、再び金正恩氏の娘の写真を配信した。娘は黒いコート姿で、正恩氏とICBM試射成功の貢献者との記念撮影に同行した。

 金正恩氏夫妻は10年6月に結婚しているが、夫妻の間には10年、13年、17年にそれぞれ生まれた3人の子どもがいるとされる。「金ジュエ」は第2子とみられている。10年生まれの第1子は、李雪主氏ではない別の女性との間に生まれた子どもだという未確認情報もある。

 北朝鮮は従来、最高指導者の私生活は明かしてこなかった。1967年に唯一思想体系が、72年に主体思想がそれぞれ導入され、独裁制が敷かれたからだ。最高指導者の私生活を語り、のぞくことは、最高指導者の神格化を否定する行為だと受け止められた。

 金正恩氏も10年まで、その存在は秘密にされてきた。父、金正日総書記と母、高英姫氏との結婚を、金日成主席が認めなかったからだ。正恩氏は金日成主席と面会したことがない。正恩氏は強い不満を抱いていたとされる。金正日氏が11年末に死去した後、李雪主氏が公式報道に登場するようになった。

 今年6月16日付の労働新聞は、金正恩氏夫妻がソファに座り、薬を選んでいる写真を公開した。「自宅で準備した薬を黄海南道の海州市委員会に送った」と伝えた。同市で急性腸内性感染症が発生したことを受けたという。これも、異例の出来事だ。

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