付け加えると、オリンピックは国別対抗のメダル争奪戦のようになっていますが、オリンピック憲章は第1章の6「オリンピック競技大会」の定義のところで、あくまで選手間の競争であって、「国家間の競争ではない」とわざわざ断っています。これは昔からですよ。建前として読み飛ばされる箇所ですが、でもね、ここは今回のオリンピックではとくに重要になるところです。

 権力は従来通り、「ガンバレ、ニッポン!」とあおる報道を期待しているでしょう。テレビの前の声なき声ができるだけ日本のことだけを考え、内向きに、ひとかたまりになっていてくれれば、そっぽを向かれることはないとわかっていますから。

 では、オリンピック開催に批判的だったメディア、新聞もテレビも雑誌もですが、どうすれば国別対抗戦のリポートではない、新しいスポーツ報道のスタイルをつくり出すことができるか。これは大仕事ですよ。やりがいもあるはずです。私は期待しているんですけどね。(聞き手・構成/AERA dot.編集部・岩下明日香)