「こうしたワクチン接種による効果は想像以上です。これを踏まえても、今年度中にできるだけ多くの人が2回接種することが当面の目標でしょう」(和田さん)

 このほか、ファイザー社のmRNAワクチンを接種した41人から採取した血液を観察したところ、2回目接種後3カ月経っても免疫が低下せず、高い状態のまま維持していることが明らかになっている。ファイザー社のワクチンを開発するにあたって実施された第3相試験の最終解析後の結果でも、6カ月後の発症予防効果は91.3%だった。

 免疫に詳しい大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授の宮坂昌之さんも、「ワクチン接種を先行したアメリカやイスラエルの状況や報告を見ると、中和抗体の量は8カ月以上、維持できている。免疫細胞の一つ、T細胞の活性も高いままです。再感染を防ぐだけの免疫は、1年は続くでしょう」とみる。

 問題は変異株の存在だ。現在、ファイザー社mRNAワクチンのアルファ株(英国株)への有効性は93.4%、デルタ株(インド株)でも87.9%と高い効果が示されている。アストラゼネカのウイルスベクターワクチンでも、同66.1%、59.8%で、「ファイザー社よりも低い数字ですが、決して悪くない」(宮坂さん)という(数字はイングランド公衆衛生庁データ)。

 懸念されるのは、感染状況が続くなか、将来的には既存のワクチンが効きにくい変異株が出てくるかもしれないという可能性だが、「ただ、そうなっても『ブースター接種』で対応すればいい」と宮坂さんは言う。

 ブースター接種とは、ワクチンを追加で接種することで免疫力の強化を図るというもので、B型肝炎ウイルスの予防接種などではすでに行われている。

 新型コロナのブースター接種は、海外ではすでに臨床試験が始まっており、イギリスでは医療従事者や重症化のリスクが高い高齢者などに、9月からブースター接種を始める方針を示している。アメリカでもFDA(米食品医薬品局)に申請する計画だ。国内では、加藤勝信官房長官が「ワクチンの効果がどの程度の期間、持続するのか等に関する情報を踏まえ、検討していく必要がある」とする。

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