6月3日、無観客で行われたサッカー日本代表対U24日本代表の試合。五輪では各競技の選手にどんな影響を与えるのか(c)朝日新聞社
6月3日、無観客で行われたサッカー日本代表対U24日本代表の試合。五輪では各競技の選手にどんな影響を与えるのか(c)朝日新聞社
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 ほぼすべての試合会場で無観客試合となった東京五輪。観客からの声援がなくなることで選手のメンタルやパフォーマンスにどう影響するのか、スポーツ心理学の専門家に聞いた。

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 今月8日、東京五輪のほとんどの試合を無観客で行うことが決定されると、そのニュースはすぐさま世界を駆け巡った。

 無観客試合が選手に与える影響について、「ほとんどの選手は観客がいないことを奇異に感じるだろう」と論評した海外メディアが多かったが、韓国では「無観衆に…日本と正面対決を控えた韓国選手団は肯定的」(WoW!Korea)という反応を示した。

■プレッシャーがなくなるのはよいこと?

<柔道と野球など韓日戦の主要分水嶺になる種目は日本観衆の一方的な応援熱気の負担から脱することができるようになったという肯定的な評価も出る。ある代表チームリーダーは、日本選手たちも満員観衆の前で必ず優勝しなければならないという負担から脱することができる、と述べた>(東亜日報)

 外国人選手だけでなく、日本人選手に対しても観客がなくなることで、そのプレッシャーから逃れられる、という理屈だが、逆に、観客からの声援がないことで世界のトップ選手たちが最高のパフォーマンスをできないのではないかと、関西学院大学文学部心理科学研究室の堀川雅美受託研究員は危惧する。

 堀川さんは、長年スポーツ心理学を研究する一方、名門として知られる同大学のアメリカンフットボール部やサッカー部などで選手たちが競技に向けてメンタルを整えるマインドセットをサポートしてきた。

「無観客のほうがプレッシャーを感じず、試合に集中でき、よい成績を収められるという選手もなかにはいるかもしれません。でも、ほとんどの選手は観客がいないことで、不安を感じるのでは。なぜなら多くの場合、観客の声援が選手たちから最高のパフォーマンスを引き出すからです」

■ポジティブ認知で声援を力に

 堀川さんによれば、選手たちが自分の置かれている状況を心理的にどう認知するかによって、パフォーマンスは大きく左右される。さらに、スポーツの世界ではプレッシャーを感じることは必ずしも悪いことではなく、特にトップアスリートになればなるほど、それをプラスに変えられる力、ポジティブな認知力を持っているという。

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