「飯森被告の両手首を押さえつけようとしたが、気づくと交番前の植え込みにうつぶせで倒れこんだ。病院でわかったが、両足を切られており、そのせいかと思った。飯森被告は言葉を発することもなく、1点を集中している感じだった」

 植え込みで飯森被告に10回以上、包丁で刺され、わき腹などを殴りつけられた古瀬巡査。体勢を仰向けにして飯森被告に反撃しようとしたという。すると飯森被告は腰のあたりにまたがって馬乗りになった。

「右胸に包丁の先端が刺さりましたが、携帯電話が右胸ポケットに入っていたので(体には)あたりませんでした」

「飯森被告にはおい、やめろと言いましたが、攻撃はおさまりませんでした」

「最終的に左胸を刺されました。一瞬、息が止まるような感じでうっとなった。包丁は左胸に刺さったままで(包丁の)柄がみえた」

 生々しく当時の状況を証言した古瀬巡査。

 そして飯森被告は、古瀬巡査が腰に装着していた、けん銃に目を付け、奪おうとした。

「ホルスターからけん銃を抜かれたらまずい。二次被害、三次被害になると被害が大きくなる。死守しないといけないと思い、必死で両手で抑えた」

「飯森被告は私に反撃をほどんと許さず、無駄なく攻撃してきた」

「私の手が血でヌルヌルし滑り、飯森被告に振り払われて、けん銃を奪われてしまった」

 けん銃もカールコードが装着されており、簡単に外すことができない。飯森被告と古瀬巡査はカールコードを引っ張るなど、けん銃の奪い合いになった。だが、飯森被告はカールコードを取り外し、けん銃を奪った。その時の心境を古瀬巡査はこう語った。

「追いかけようとしたが、足に力が入らず倒れこんでしまった。見上げると、飯森被告がけん銃をカールコードから外すのが、見えた」

 検察官からその時の気持ちを聞かれ、「このけん銃で撃たれて死ぬんだろうなと思った」と述べた。

 飯森被告はその場でけん銃を発射することはなく、目の前にある最寄り駅の反対側の住宅街に姿を消したという。

次のページ
けん銃を取られた無念