「思考力・判断力・表現力等」が測れているかを確かめることは数字だけでは難しいため、複数の観点から見る必要があると思います。例えば、解答データの統計的な分析に加え、外部評価も含め評価や意見を伺うということも一つです。今後は、大学入試センター内の研究として受験生の解答プロセスの分析を行うことも必要と考えています。また、各大学では入学後の学生の教育状況を追跡し、入試や教育のあり方を分析するIRの取り組みが進みつつあります。将来的に、その中で共通テストで測った力との関係を確かめることも有効ではないかと考えます。
■英語の問題量は妥当
共通テストは2017年、18年の2度の試行調査(プレテスト)を経て実施された。プレテストでは、国語で生徒会部活動規約などの実用文が出題されたり、複数の教科で会話形式の問題が出たりなど話題を呼んだ。だが、本番のテストは、全般的にプレテストよりもセンター試験に近く「初年度は安全運転に徹した」との声があがった。そうしたなか、変化が大きく議論を呼んだのが「英語」だ。
──英語のリーディングはセンター試験に比べ分量が千語以上増え、スピードが要求されました。全国英語教育研究団体連合会は「速読と精読のバランスや効果測定の観点、特に 思考力を測定する観点からするとこれ以上語数を増やすことは有効ではない」と指摘しています。
小野:英語で測りたい思考力等は、一語一語を日本語に置き換えるのではなく、目的・場面・状況等に応じて、様々なテクストや内容から概要や要点を把握する力や、必要とする情報を取得する力です。こうした力を測るには、問題文にある程度のボリュームが必要になります。問題量と試験時間、受験者の負担のバランスについては今後とも考慮する必要がありますが、本年度については、問題作成部会の見解にあるように実践的なコミュニケーション力を測るために妥当な分量だったと考えています。
■知識の活用力を問う
──リーディングでは、スマホでのメッセージのやりとりやファンクラブの入会案内など実用的な場面が多く設定されていました。一方で、実用に偏りすぎたのではないか。大学入試なのだからもう少しアカデミックな内容の文章が必要だったのではないかとの声も聞かれます。
小野:学習指導要領では、コミュニケーションを行う力を育てることとしており、生徒の身近な日常的な話題や社会的な話題を扱うことになっています。
今回の共通テストでは、物語、社会科学的な話題、自然科学的な話題等を扱っています。センター試験からバランスが大きく変わったとは考えていません。
なお、大学入学者選抜の試験であることを踏まえ、多様な題材を取り上げていく工夫は重要と考えています。その際、公平性の観点からは、題材等が受験生の日常から離れすぎないような配慮も必要と考えています。