東京五輪の開会式が無観客で行われる中、国立競技場に花火が上がった。沿道ではタブレットなどで開会式を視聴する人の姿もあった/2021年7月23日午後8時32分 (c)朝日新聞社
東京五輪の開会式が無観客で行われる中、国立競技場に花火が上がった。沿道ではタブレットなどで開会式を視聴する人の姿もあった/2021年7月23日午後8時32分 (c)朝日新聞社
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 安倍晋三前首相の五輪開催に関する発言が波紋を呼んでいる。6月下旬発売の月刊誌「Hanada」(8月号)の中で、「共産党に代表されるように、歴史認識などにおいても一部から反日的ではないかと批判されている人たちが、今回の(東京五輪)開催に強く反対しています。朝日新聞なども明確に反対を表明しました」と話したのだ。この発言を識者たちはどうみるのか。AERA 2021年8月2日号で取り上げた。

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 劇作家の永井愛さんは、安倍氏は「反日的」という言葉を巧妙に使っていると感じたと話す。

「安倍氏は『一部から反日的ではないかと批判されている人たち』と言い、反日的と言ったのは自分ではなく一部の人たちだという体裁を取っています。反日的という言葉に責任を取らないようにしながら、反日的という言葉が印象づくようにしている。意図的に論点をずらす、安倍氏らしい論法だと思います」

 さらに、自民党支持者や与党内にも五輪に反対する人はいるはずだが、そうした人たちに「五輪に反対すれば反日的と見なされる」と、柔らかく脅しをかけているとも見えると言う。

「安倍氏は、自分が招致に深くかかわり引っ張ってきた東京五輪が批判されることで、自分のメンツにかかわると思っているのではないでしょうか。そのため、科学的根拠も否定する反知性主義的なもの言いになっていると思います。安倍氏の発言は、五輪に反対する人は『非国民』だと言っているようなもの。戦時中に戦争に反対する人は『非国民』と言っていた、大日本帝国憲法時代と同じ価値認識で生きているのだと思います」(永井さん)

 外交評論家の孫崎享(うける)さんは、「安倍発言」は五輪に反対する人たちに「反日的」というレッテルを貼ることで反対者を抑え込もうとしているが、それ以上に「危険な要素」をはらんでいると指摘する。

■人命尊重を測る試金石

「個人の命より、国家目的を優先するという思想です。過去、日本の政治は、何より人命を最優先してきました。例えば1977年に日航機がハイジャックされる事件が起きた時、当時の福田赳夫首相は乗客の命を救うため、超法規的措置で犯人の要求する日本で勾留中の人物を釈放しました。そのくらい、人の命は重かった。しかし、安倍氏の発言はその逆です」

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