

西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、東京五輪で西武・平良海馬の活躍に期待する。
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東京五輪が開幕した。いろいろと開幕前から問題があったようだが、スポーツそのものには罪はない。選手の一挙手一投足が見ている者を感動させ、心から喜び、悲しみを分かち合えるような大会になってほしいと願う。選手も思い切って大会に臨んでもらいたい。
東京五輪はこれまで、新型コロナウイルスの世界的まん延による史上初の延期や、関係者の失言などもあった。開会式直前になって、過去の発言などによって辞任や解任もあった。世界が注目する大会であるだけに、要職につく者は、過去の発言まで問われてしまう時代である。しかもコロナ禍。こんなに窮屈なら、日本でやる必要ないな、と感じる方も少なくないでしょう。
スポーツの世界に身を置いた者としては、ただただ、アスリートの頑張りが見ている者に伝わってほしいと願うばかりである。開会式前に競技がスタートしたが、ソフトボールの上野由岐子の熱投、そして女子サッカーの劣勢でもひたむきに戦う姿は印象的だった。
野球もいよいよ始まる。たった6チームで、メジャーリーガーは参加していない。「本当に世界一を決める大会なのか」と言われているが、国際大会は絶対に接戦になる。しかも、負けても敗者復活があるのだから、最後に金メダルになっていればいいという特殊な戦いだ。どこで勝ちにいくか、どの展開になったら、ある程度の負けも受け入れるのか。そういったことも問われることになる。
日本の国民性なのだろうか。特に野球においては、国際大会になると「負けを受け入れる」ということが上手ではない。どうしてもネガティブな空気が流れ、勝手に後がないプレッシャーを感じてしまう。稲葉篤紀監督がそこをどうコントロールするかもカギとなる。
投手の「勝利の方程式」などは決められないだろう。大会になれば実績は関係ない。調子のよい者を見極め、重要ポイントに配することだ。試合の流れの中で、その試合のクローザーが崩れかけた時、すぐにスイッチしないといけない場面だってくる。調子のよい救援投手を、前半戦の要所のイニングに投入することもあるだろう。ただ、すべての試合にスクランブルで臨もうとすると、たとえ5~7試合しかないとはいえ、大事なメダルマッチで、力は発揮できない。「メリハリ」と「切り替え」の連続である。