「90年代からのフジテレビとの激烈な視聴率競争を経て、若者層を取り込むことが強さの秘訣であることに気づいたんでしょうね。2000年代半ばには『13~49歳』を『コアターゲット』と呼び、会社として重点化していました」(同)

 当然、この層が実際に見ているかがわかる個人視聴率が重視される。そのかいあって、日本テレビは10年代に入ってから視聴率トップの座を走り続けている。

「取引指標では視聴率がさまざまに分析されるにつれ、世帯視聴率ではCMを誰が見ているかがわからないことが問題になってきました。議論の末、18年度から東京のスポットCMで売買基準として個人視聴率が使われるようになりました」(同)

 テレビ関係者が声をそろえるのは、スポンサー企業としては、次世代へのブランド定着などを狙って「若年層」にCMを見てほしいと思っているということだ。いくら世帯視聴率が高くても、若年層に人気がないとスポンサーがつかない番組もあるとされる。

 こうした流れが重なって、テレビ業界は個人視聴率“一色”になった。狙うのは、「ティーンエージャーがいる家族」である。昨年から対外的に公表する視聴率を個人視聴率に変更したとする日本テレビをはじめ、TBSとフジテレビが具体的に重点年齢層を掲げている。

 TBSは15年から「13~59歳」を「ファミリーコア」とし、19年からは重点化、今年度は「4~49歳」へ年齢層を下げた。フジテレビは、昨秋から日本テレビと同じ「13~49歳」を「キー特性」と呼んで重視する。

 ターゲットを絞るのだから当然、その層に受け入れられやすい番組が増える。

「『第7世代』と言われるお笑いの若手芸人の出演が1~2年前よりずいぶん増えました。若い人を出さないと重点層は見てくれないという危機感があるのでしょう」(同)

 なかでも今春の番組改編で話題を呼んだのが、TBS系の朝の情報番組「ラヴィット!」だ。この時間帯にしては珍しくニュースやワイドショーの要素がない。お笑いコンビ「麒麟」の川島明をMCに迎え、若手芸人が大挙してひな壇を陣取る。

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