バイデン政権は対中強硬路線を続けていますが、いつ中国と手を握り合って日本は梯子を外されるかわからない。それなのに、日本は米国の言いなりになっているようでは、主権国家としての外交もできないのかと諸外国から揶揄(やゆ)されるだけです。
金丸:米国がこのまま強硬姿勢を続けていくのであれば、北朝鮮も核・ミサイル増強路線に回帰するでしょう。北朝鮮は、経済と軍事の並進路線をとってきました。金正恩氏とトランプ氏が対話を続けていた間は、経済を優先させる方針に転換していましたが、米国と決裂した後、再び軍事に力を入れています。ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験や核実験の再開もあり得ます。本来なら、日本が仲介役を果たさなければならないのに、その役割を放棄しています。
孫崎:日本政府の政策がどうあれ、金丸さんのように北朝鮮と独自のパイプを持っておくことがすごく重要だと思います。私は米国の動向を注視してきたのですが、政府の政策とは必ず別のルートを確保しています。
例えば、韓国の金大中元大統領は、1970年代には軍事政権だった朴正煕大統領と対立し、民主化運動に取り組んでいました。73年に日本で韓国中央情報部(KCIA)に拉致されるなど弾圧を受けましたが、渡米してハーバード大学の研究所に在籍していました。その後、韓国で政権交代が起きると大統領に選出されました。米国は将来の政変なども予見して、金大中氏を受け入れていたのです。
金丸:私は父の遺志を継ぎ、長く北朝鮮と交流してきましたが、やはり民間人の外交には限界があることを痛感します。私は政治家になるつもりはなかったし、父も世襲反対の人でした。「どうしても政治家になりたければ、俺が健在なうちに選挙区で立ち向かってこい」と言っていましたからね。ただ、北朝鮮の高官と話しているときだけは議員バッジが欲しかった。民間では親睦、交流で終わってしまうのです。やはり政治家でなければ、外交は絶対に動きません。