テレビ画面越しには、選手とインタビュアーがどれくらい離れているのか正確な距離はわからない。また、画面には映らないが、選手のすぐ横で海外メディアが自国の選手などにインタビューしているケースもある。プレイブック上では、競技終了後のミックスゾーンにおいて「アスリートとインタビュアーの距離を2メートル以上に保つ」とされている。

 これまでは、選手がメダルを獲得した直後の興奮した様子が五輪中継の定番でもあった。2004年アテネ五輪の競泳平泳ぎで金メダルを取った北島康介によるあの名言「チョー気持ちいい!」も、直後のインタビューを通して出てきた言葉だ。だが、コロナ禍の五輪ではインタビュー前にマスクを渡されることで、そういった風物詩にも変化があらわれるのかもしれない。
 
「苦しくてマスクを着けていられない、という選手ももちろんいると思います。なので、まず息が上がっている人には話しかけない。息が整うのを待って、落ち着いてマスクを着用してから話をするような配慮が必要なのかなと思います」

■五輪だけじゃないマスク問題

 運動直後のマスクは五輪に限っていえることではない。もし自分たちが運動している時はどのように考えたらよいだろうか。この時期であれば、熱中症のリスクが懸念されるが、濱木医師によると最も理想的なのはマスクをしなくても良い環境を整えることだという。

「マスクをして運動をすることで心拍数や呼吸回数が上がり体に負担がかかります。そうすると体感温度が上がったり、血中の二酸化炭素濃度が増えたりするため、熱中症のリスクが高くなってしまう可能性があります。理想的なのは、人がいない場所や換気の行き届いた場所で他の人との距離をとる、など周りの環境を整えてマスクをしなくてすむようにすること」

 だが、現実的には難しい場合もあるだろう。そういった時は「水分補給などでできる限りの熱中症対策をするしかない」と濱木医師は言う。

 感染の拡大が続く中、人が集まる場所でマスクを着用することは感染対策として重要だ。しかし、マスクによる熱中症などのリスクを回避するためには、なるべく人の集まるところに行かないなどの基本的な対策にも立ち返りたい。(文/AERA dot.編集部・大谷奈央)

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