それまでは「男っぽく見られたい」とか、「俳優っぽい格好をしなきゃ」とか、ありもしない幻想に縛られて、本来の自分を出せないでいた部分もありました。たとえば、僕、肌が弱いので美容について調べるうちに詳しくなったんですが、そんな部分は表に出さなかった。でも、なかなか肌が改善しなくて、一回、諦めたんです。すると、どんどん肌の調子が良くなって。「ああ、人目を気にしないで堂々とするって大切なんだ」と。

■振りきってやろう

塩野:それからは、自分に正直に、美容やファッション、自分の見せ方など、興味がある分野を徹底的に追求して表現していくようになりました。自己肯定感を上げていく作業をたくさんやったら、発言や人への接し方が変わった。そうしたら、自分を取り巻く環境も人も変わった。いろいろないいことがありました。

——自分に自信を持てたことで、撮影現場でもアイデアを提案できるようになった。そんなとき出合ったのが、映画「PRINCE OF LEGEND」のメガネ王子、久遠誠一郎役や、映画「HiGH&LOW THE WORST」の美しくも不気味な小田島有剣役だった。自分なりに役への解釈を深め、クセやビジュアルでキャラを確立する。果敢にアドリブも繰り出し、大勢の若手俳優が出演するなかで存在感を示した。

塩野:小田島はもともと知的でクールなキャラクターだったんですけど、普通に演じては埋もれてしまう。振り切ってやろうと考えた結果、ああなりました。撮影中は、戦闘態勢でしたね。不良ものなので役としても敵対する相手側に負けたくないし、俳優としてもたくさんいる中で負けたくない。誰かに「あいつ気に入らねぇ」と言われようとも、「俺は俺の責務を全うする!」という(「鬼滅の刃」の)煉獄杏寿郎みたいな気持ちで挑んでいました(笑)。そういう姿勢でいたら、監督が台本にはない見せ場を作ってくださった。鉄パイプでカーンとやって「毎度。殺し屋鳳仙だす」と言うシーン。そのせりふは、監督が原作から引っ張ってきてくれたものですが、そのあと自分でもアドリブを入れさせてもらいました。印象に残ったと言われることも多くて、ありがたかったです。

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