中外製薬によると、軽度から中等度の治療や予防に効果があると期待されている。厚労省の発表資料では、ロナプリーブが入院や死亡リスクを70.4%減少させたとある。

 菅義偉首相も会見で「これから徹底して使用していく」と強調したが、ネックは現状では供給量が限られること。

 厚労省は、必要とする患者に公平に配分するため、供給が安定するまでは国が買い上げて医療機関に無償提供するとしており、目下の感染爆発を抑えるのにどこまで効果があるかは不透明だ。

 国産ワクチンでは、バイオ製薬ベンチャーのアンジェス(大阪府)が追加の治験を始めると発表。ただ、実用化の見通しはたっていない。第一三共は年内にも最終治験を開始し、来年の実用化を目指す。また塩野義製薬も年内に最終治験を始め、年内実用化も視野に入れており、いずれも早期の実現が待たれる。

 世界に目を向ければ、デルタ株が猛威を振るっているのは、日本に限った話ではない。

 米国では最近、疾病対策センター(CDC)がマスク着用の指針を見直し、感染が多い地域は、ワクチン接種を済ませていても屋内ではマスクを着用するよう求めた。

 CDCは5月、ワクチン接種を済ませていれば、屋外および屋内の大半の場所でマスク着用は不要との見解を発表していたが、その後、デルタ株の流行が深刻化。ワクチン接種を終えていても感染する「ブレークスルー感染」などが増えたことから、方針を見直した。日本でも、2回接種が済んでいても要注意だ。

 前述の室井さんは「マスク着用、手洗い、うがいがウイルス量を確実に減らすので、地道にしていくことが大切だ」と強調する。決定打がないなかでは、愚直にやれることをやり続けるほかない。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2021年8月13日号

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