感染状況が緊迫化するなか、ワクチンの早期接種への期待は高まるばかりだが、供給の限界もあり、迅速に進んでいるとは言えない。

 ワクチン調達の制約から、特別の接種対応をとってきたのが英国だ。

 日本でも主流のファイザー製ワクチンは2回接種が基本で、1回目と2回目の接種間隔は3週間程度が推奨されている。これに対し英国は、1回目のワクチンをできるだけ幅広い人に接種してもらうため、昨年末に間隔を最大12週間とする方針を示した。変異株の拡大を受け、今年7月には40歳未満で12週間の間隔を8週間に短縮した。

 英オックスフォード大学の研究者らは、ファイザー製ワクチンの2回目の接種間隔を10週間にすると、異物(抗原)への中和作用がある中和抗体の産生が、3週間の場合より多かったと発表した。BBCが7月にこの結果を報じ、「英国の状況からは(接種間隔は)8週間が最適かもしれない」とする研究者の声も紹介している。

「日本でも、まずファイザー製ワクチンの1回接種を優先的に進めることは検討の余地がある」

 こう話すのは医療経済ジャーナリストの室井一辰さんだ。

「1回では接種効果が弱く、発症を予防する効果は3、4割ですが、まったく接種を受けていない無防備な人が国内に数千万人いるリスクを減らしたほうがいい」

 厚労省はファイザー製ワクチン接種の1回目と2回目の間隔の標準は「3週間」としており、それを超えた場合、できるだけ早く2回目を接種するよう勧めている。日本でも接種間隔を広げる考えはないか聞くと、担当者は「英国の研究発表については、一つの治験(臨床試験)だけで判断するものではない。こだわりがなければ3週間で打ってもらいたい。3週間を超えたら、できるだけ早く打ってもらえばいい」と従来の方針を繰り返した。

 新たな治療薬や国産ワクチンの開発にも期待がかかる。

 治療薬で注目されるのは、中外製薬の「ロナプリーブ」。厚労省が7月19日に特例承認した。「ウイルスそのものを攻撃する治療薬」(室井さん)で、人工の抗体を二つ組み合わせて直接注入する「抗体カクテル療法」と呼ばれるものだ。抗体カクテル療法は、米国のトランプ前大統領がコロナに感染した際に使われたことでも知られる。

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