緊急事態宣言の延長と範囲拡大を決めた菅首相(右) (c)朝日新聞社
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「安全・安心な大会」のかけ声が、いかに空虚だったことか。東京五輪の開幕と軌を一にするかのように、新型コロナウイルスの感染者数が再び急拡大している。感染爆発がどこまで広がるかは見通せず、医療現場のひっ迫度は日に日に深刻さを増しつつある。

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 東京の新規感染者数は、7月半ばからほぼ毎日、1千人台で推移していた。それが五輪開会式のあった4連休(22~25日)を経た27日には2848人にはね上がり、それまで最多だった2520人(今年1月7日)を超えた。翌28、29日には3177人、3865人と急増し、31日には初の4千人台に。全国でも29日に、1日あたりの感染者数が初めて1万人を突破した。

 怖いのは、これから先どこまで増えるか、天井が見えないことだ。

 京都大学の西浦博教授が厚生労働省に助言する専門家会議に提出した試算では、新たな感染者が前週比1.4倍のペースで増え続けると仮定した場合、8月末には東京で1日の感染者数が1万人を超すという。

 感染者が急増した背景には、高齢者を中心にワクチン接種が進む一方、若い世代への接種が思うように進んでいない現実がある。感染力が従来型より強い変異株(デルタ株)が主流になってきているのも大きい。首都圏では、新規感染者の75%を変異株が占めると推定されている。

 第3波に比べ現時点では重症者や死者が少ないが、感染者が増えるにつれ、重症者も増えるとみられる。一般の医療提供体制も圧迫することが懸念されている。

 日本医療労働組合連合会は6月10日の時点で、五輪を開催しようとする政府に抗議する声明を発表。「医療現場のひっ迫度は改善されることなく、いのちの選別が行われる『医療崩壊』が現実となっている」と指摘していた。まさに、恐れていたことが起きつつある。

「コロナ対応で確保していたベッドの6~7割がもう埋まっている」「都からはベッドを増やしてと要請が来ているが、一般病床のベッドからの切り替えは手間がかかり、スタッフをそろえるのがさらに大変だ」など、現場からは悲鳴に近い声が相次ぎ届いているという。

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