林:あのころ人気があった人で、いま消えちゃった人がいっぱいいるけど、みうらさんはずっと出っぱなしだからすごいですよね。

みうら:出っぱなしなわけないですよ(笑)。林さんと相合い傘のころはね、糸井さんに「おまえ、『ビックリハウス』の編集部に行って、とりあえず座っとけ」ってアドバイスを受けたんですよ。あのころはまだ活版だったから、「級数指定を間違ったときにスペースが空くから、そのときイラストを描かせてもらえ」って(笑)。それで、渋谷にあった編集部の隅で、毎日ただ座ってたんです。ケント紙とペン持ってね。するとたまに「あ、スペース空いた。みうら君」って呼ばれて、小さなカットを描いてたんです。

林:へぇ~。

みうら:そのうち、どなたか先生の原稿が落ちたんでしょうね。「みうら君。ここで漫画4ページ描いてよ」って(笑)。そのとき初めて、牛が主人公の漫画を描いたんです。後にそれが人気ランキングに入って、連載をもらうようになったんです。だから「いるんだけど、いない」みたいな役が昔っから得意だったんですね。

林:みうらさんの本で笑っちゃったのは、「編集者を接待して仕事をもらう」って。ふつう、編集者の人が接待してくれるんだけど。

みうら:それは“先生”の場合でしょ。僕の場合は「ゆるキャラのページがほしいんですけど」と直訴するしかなくて。それはそもそも「ない企画」を提案するわけで、絶対に編集者からの依頼なんてないんですよね。だから、企画を考えたときには編集者を飲み屋に呼び出して接待させてもらうなんてこともあるわけで。「こんな企画なんだけど、できれば1ページ、できればカラーで……」みたいな商談をするわけです。

林:だけど、そんなことしなくたって、みうらファンの編集者って各社に一定数いるでしょう。

みうら:いやァ、それがなかなか通らないんですよ(笑)。いきなり「チャールズ・ブロンソン(米俳優)はすばらしい。彼をリスペクトした連載ページがほしいです」と言っても、「はあ?」ってなるのは当然ですし。

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