異変を感じていた人もいた。本郷さんが主宰する歌謡教室の元レッスン生で女優でもある前ひろ子さんだ。

「港さんのディナーショーで1曲デュエットしたのですが、事前の音合わせの稽古をおっくうがったのです。6月中旬に心臓と右足のバイパス手術をされ、回復が遅れていて、ダメージが残っているのかと思っていました。人前では弱気なところを見せない方なので、1日のステージでも元気に振る舞っていたものの、袖に引っ込むと疲労困憊(こんぱい)。出番が終わってすぐに帰宅されました」

 仲代社長によると、5月に右足に違和感を感じ、6月に板橋区内の病院で検査したところ、左足同様に血流が悪くなっていることが判明。しかも、それが心臓に過大な負担をかけており、左足のバイパス手術の前に心臓の手術をせざるを得なかったそうだ。

 本郷さんは福井市生まれ。1971年にオーディション番組でチャンピオンになり、この年に「燃える恋人」(RCA)で歌手デビューした。年末には小柳ルミ子、南沙織らと日本レコード大賞新人賞を受賞。甘いマスクで人気アイドルとなった。

 故・坂口良子さんとの共演が話題となったドラマ「アイちゃんが行く!」(73年、フジテレビ系)でブレークすると、80年代以降は主に俳優として活躍。ドラマ「ザ・ハングマン」(テレビ朝日系)、「必殺」(同)、「水戸黄門」(TBS系)といったシリーズドラマの他、映画やVシネマにも多数出演した。

 広く活躍していた本郷さんだったが、亡くなるまでの20年間は病気との闘いだった。

「本郷は、2000年10月に脳出血で倒れて約7カ月入院して以来、ずっと闘病生活が続いていたのです。後遺症で左半身がまひしたため、退院直後は歌うどころか、お茶を飲んでも無意識のうちに口からこぼしてしまうこともありました」(仲代社長)

 さらに03年8月には重度の腎不全で再び倒れ、それ以降の18年間は週3回の人工透析が欠かせなくなった。加えて胃潰瘍(かいよう)の悪化も追い打ちをかけた。

次のページ
リハビリ続け新曲リリース、カラオケ店営業、歌謡教室も