シドニー大会では当初用意していた7万個が足りなくなり、2万個が追加注文されたこともあったことから、実際、選手村での需要はあるようだ。ただ、組織委は「コンドームの配布の目的は、選手村で使うためではない」と否定する。あくまでも、「発信力のあるアスリートが母国に持ち帰っていただき、啓発にご協力いただくという趣旨・目的のもの」だという。
コロナ禍で開催される今大会は、“濃厚接触”はご法度だ。今大会では選手村での配布は取りやめになり、選手の帰国の際に“お土産”として配布されることになったと推測できるが、組織委は次のような回答だった。
「東京大会では、選手にもっと趣旨・目的をしっかり伝えていくために、帰国の手続きの際に、各国選手団向けに配布し、母国に持ち帰って啓発に協力いただけるような仕組みとすることにしています」(同)
しかし、なぜ「浮世絵柄」という情報が出回ったのか。
浮世絵コンドーム自体は架空のものではなく、コンドームメーカー「オカモト」の製品として実在する。装着すると、ゴムの中央部に浮世絵が浮かび上がるデザインで、歌川豊国の役者絵「工藤祐経」などがプリントされている。
浮世絵コンドームは、同社が2019年夏に発表した「デザインコンドーム」の一つ。過去に同製品について取材した記事(2019年6月3日配信の記事「コンドームにもっと関心を 性感染症予防を真剣にバカバカしく」)によると、担当者は開発に込めた思いについて「ユニークなアイデアで、少しでも多くの人に関心を持ってもらうことが狙いです。近年の性感染症の増加を受け、社内で解決策を真剣に考え、バカバカしいものを製作しました」と話していた。
コンドームには、望まない妊娠を防ぐことに加え、性感染症防止という役割もある。コンドームに対して羞恥心を抱いてしまい、購入や使用がしづらいという声が多かったことから、コンドームをもっと身近で使いやすいものにする狙いがあったという。とりわけ浮世絵デザインは、ジャパニーズカルチャーに興味のある訪日外国人を意識したものだ。