11月30日リリースのニューアルバム『Transcription』(トランスクリプション)はカバーやアレンジなど音楽のさまざまな楽しみ方を届ける(撮影/写真映像部・高橋奈緒)
11月30日リリースのニューアルバム『Transcription』(トランスクリプション)はカバーやアレンジなど音楽のさまざまな楽しみ方を届ける(撮影/写真映像部・高橋奈緒)

 清塚のコンサートでは、演奏だけでなく、漫談家さながらのトークが観客をひきつける。「笑うためにコンサートに行く」人もいるとか。テレビ番組で目にする機会も多いが、そのトーク力はどこで磨かれたのか。

「どこでしょうね(笑)。楽曲の説明はあいさつ代わりにしたいのですが、中学生のとき、『ショパンがこう考えて作った曲です』と言ったら、先生に『品がない、無礼だ』とものすごく怒られて(笑)。でも負けずに続けました。クラシックというだけでハードルが高いので、私は観客と音楽の距離感を縮める努力をしたいんです。作曲家の意外なエピソードを話すと笑いが起きる。覚えてもらえる。気づいたら、笑いばかりになっていました(笑)」

■聴きたい曲を届けたい

 現在は来年にかけて47都道府県をまわるツアーの真っ最中。「毎回、どんなピアノやお客さんに出会えるのか、楽しみです。ピアノやホールの響きに合わせてアレンジも変えているんです」と話す。今後についても、こう語った。

「音楽には波というものがあって、それをキャッチしてみなさんが聴きたいと思っている曲を提供したいんです。お題に答えられたという快感がある。自分の中にある芸術性、音楽を理解してほしいのは二の次ですかね。今まであまりやってきていない歌作りにも挑戦したいです。作詞家とご一緒して、言葉のつく音楽の魅力を届けていけたら」

(ライター・小林佳世)

AERA 2022年12月5日号