
卓越したピアノ演奏や作編曲、抜群のトーク力で多くの人を魅了する清塚信也。11月に40歳を迎えた清塚が、11月30日に発売する新しいアルバムやトークセンスの源、これからのことなどを饒舌に語ってくれた。AERA2022年12月5日号の記事を紹介する。
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前作から1年2カ月ぶりにリリースされるアルバム「Transcription(トランスクリプション)」(ユニバーサルミュージック)。アルバム名は音楽では曲や音を譜面に起こすという意味だが、それが転じて本作ではカバーやアレンジなど音楽のいろいろな楽しみ方を提示する作品となっている。

「根本にあるのは、ピアノやその他の楽器がもつ魅力を、いろんな形で引き出して伝えたいという想いです。今回はピアノのソロ以外にも、ストリングス、ギターやドラムなど多くの楽器とさまざまなジャンルの音楽を収録しました。ピアノ一つとっても、いろんな表情があることを面白がってもらえたら」
■アレンジして怒られた
アルバムではショパンのノクターンやベートーヴェンのピアノソナタ「悲愴(ひそう)」など、聞き覚えのあるクラシックの名曲が、清塚の手によって新たな魅力を持つ楽曲に生まれ変わった。
「元の曲の理解度があるからこそ、良い部分を引き出せたのではと満足しています」
アレンジといえば、クラシック音楽業界では“ご法度(はっと)”のイメージがあるが、こう話す。
「子どものころからアレンジするのが大好き。最近では動画等で発信する方が増えて、受け入れられやすくなったと感じますが、当時は先生によく怒られていましたね」
羽生結弦さんのショートプログラム用に編曲した「ロンド・カプリチオーソ」や、音楽監督として劇中音楽を手がけたミュージカル「ゴヤ─GOYA─」などの話題曲も収録される。
「フィギュアスケートもミュージカルの楽曲も、時間ぴったりにする制約やコンセプトがあるから難しかった。その分、曲作りにメリハリも生まれて楽しかったです。自分ひとりではここまでストイックにはできなかった。息つく暇もないので、演奏時はコンクールに出る気分です」