住宅診断などのコンサルティングを担うさくら事務所(東京都渋谷区)のホームインスペクター(住宅診断士)、田村啓さんはこう説明する。

 多くは日当たりが悪く、冬場は結露も起きやすい部屋。リフォームでかびの除去など根本的な処理をなさず、そのまま壁紙で覆い隠してしまうケースがあるというのだ。

 田村さんもかつて調査依頼を受けて、リフォーム中の中古マンションの壁紙がはがされ、かびだらけの状態を目の当たりにしたことがあるという。

 また、給水管や排水管がさびだらけの事例も報告されている。管のなかにさびが詰まっていたり、管自体がさびて劣化していたり、穴があいてしまったりしたものもあった。

 近年は樹脂系などのさびない素材を使うことも多いが、「築30年以上だと鉄の管が使われ、さびやすい」(田村さん)。

 給水管や排水管は適切なタイミングで交換しないと、水漏れにつながってしまう。すぐに気づけばいいが、知らないうちに下の階に損害を与えかねない。

■階下が水浸しに 被害総額1億円

 一般的に、マンションのこうした配管は上下階を「縦方向」に貫くものが共有部分に設置されている。そこから各部屋に引き込む「横方向」の配管は専有部分を通る。もし、この横方向の配管で水漏れして下の階に迷惑をかけると、その住民が損害の責任を問われてしまう。

 田村さんが知る水漏れで“最悪”だったのが、下の階とその下の階に水漏れしたケースだ。たまたま下の階の住人が留守中だったこともあり、部屋が水浸し状態になっていた。六つの部屋に影響が及び、被害総額は1億円規模にのぼったという。

「下の階に赤ちゃんや体の不自由な人がいて、おぼれたりする可能性もあります。漏電につながり、火災が発生することもあり得る」(同)というだけに、見えない部分にも注意が必要だ。

 さらに、勝手に穴をあけてリフォームされてしまった事例も。

 鉄筋コンクリートの上下階の間の部分において、配管を交換するためにそのコンクリートの床が一部あけられていたという。穴をあけた部分は木の板でふさがれていた。ここまで大胆なものは珍しいかもしれないが、構造上の強度や遮音性に影響が出かねない。リフォーム業者が勝手に、外壁に穴をあけて排気ダクトを通していたケースもあった。

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