もはや統治全体が崩壊してきています。安倍・菅両政権は官僚の人事権を握り、政治主導を実現してきたようにも見えますが、内実は一部の側近官僚の言いなり。日本の官僚機構が優秀だというのはもはや神話の類いです。
そんな権力中枢がちぐはぐなコロナ対策を主導してきた。一義的な責任は厚生労働省を中心とする「感染症ムラ」にあります。その頭である尾身茂氏は7月15日に「行動制限だけに頼る時代は終わりつつある」と言いましたが、何を言っているんだ、という話です。そんな「時代」などそもそも存在しない。「検査抑制論」という方針を最初に掲げて行動制限でどうにかなると考えたところから完全に誤っていた。それを正せないのは為政者の知力のなさとともに、公正さに対する感覚が根本的に欠如しているからです。
五輪が終われば、コロナ禍の現実をごまかす手段はもうありません。菅政権はいよいよ行き詰まるでしょう。しかし、自民党の別の政治家にトップをすり替えても何の意味もありません。政権交代の可能性が事実上なく、いつまでも政権を握れるとなれば権力が腐敗するのは必然。そうさせているのはこの国の有権者です。
(構成/編集部・渡辺豪)
※AERA 2021年8月16日-8月23日合併号