つまり、『現在の高齢者』の収入と支出の差からくる生涯不足額平均1300万円~2000万円は、平均純貯蓄額(2484万円)や退職給付額(1700万円~2000万円程度)よりも少ないのです。

 これらのことから、『現在の高齢者』は、退職金や貯蓄額を取り崩せる範囲で生活していることがわかります。

「月5万円不足している」のではなく、「蓄えを取り崩せる範囲で身の丈にあった生活をしているため、収支は均衡しており、赤字や不足はない」ということになります。

「貯蓄が2000万円超あるから月5万円強の赤字を計上できている」のであり、報告書は統計の使い方の順序が逆であると言わざるを得ません。

■『将来の高齢者』を待ち受ける3つの現実

 一方で、これから老後を迎える世代は、『現在の高齢者』に比べ、より厳しい3つの現実が待っています。

 すなわち、「平均寿命の延び」「退職金の減少」「年金支給額の減少リスク」です。

 一つ目の「平均寿命の延び」。金融庁の試算(2015年時点の推計)によると、現在60歳の人の約4人に1人が95歳まで生きると言われており、「人生100年時代」が到来します。

 現在60歳の方が95歳まで生きるとすれば、貯蓄を取り崩す期間は20~30年ではなく、35年となります。

 貯蓄額が一定だとすると、毎月の取り崩し額は現在の高齢者よりも少なくなるのです。

 もう一つの厳しい現実が、「退職金の減少」です。

 老後生活の大きな柱となってきた定年退職時の退職給付金ですが、その金額はピーク時から約3~4割も減少しており、引き続き減少傾向にあります。

 最後に、「年金受給額の減少リスク」。

 2020年度の夫婦の標準的な年金額は22.1万円で所得代替率(現役時代の平均手取り収入に対する年金額の比率)は62%ですが、この所得代替率は今後徐々に低下すると言われています。

 これらのことから、個々人によって状況は異なるものの一般的に言って、『将来の高齢者』である若い世代の皆さんは、今のままでは、『現在の高齢者』に比べ、経済的により厳しい老後を送る可能性が高いことになります。

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『将来の高齢者』は身の丈を伸ばす努力を