・マル得【3】地域包括「ガンガン利用しよう」
06年創設の地域包括支援センターは、高齢者に医療や福祉などのサービスを提供する中核機関。前出の高口さんは話す。
「一部の人は要支援の人しか相談できないと思っているみたいですが、もっと地域包括支援センターを頼っていい。要介護(要支援)であろうがなかろうが、こんなこと相談していいのかな?と思うことこそどんどん質問していただきたいと思います」
■決断してから悩み揺れる思い
地域包括支援センターには、社会福祉士や保健師らがおり、認知症高齢者の財産や権利を守るための成年後見制度の支援や、高齢者虐待の対策、要支援に認定された地域の高齢者のサポートなども行っている。行政機関や保健所、医療機関ともつながっていて、横断的に解決に導いてくれる。
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介護保険を利用するためには、市区町村の窓口で「要介護(支援)認定」の申請をし、「介護認定調査」を受けるのが基本だ。これまで私は「要介護度は高いほうが得」と思い込んでおり、認定調査の家族からのヒアリングでは、両親の「できないことアピール」に必死だった。
要支援1から要介護5までの7段階の中で、最も要介護度が高い5になると、区分支給限度基準額はいちばん高くなる(月に受けられるサービス料の枠が増える)からだ。実際に、母が昨年、体調悪化で寝たきりになってしまい(要介護5と認定された)、在宅介護で使えるサービス料の枠が広がった時は助かった。玄関前のスロープ(福祉用具貸与)も加えて移動が楽になった。今年になって新たに母の施設入居の申し込みをした時も「要介護5」が有利に働いた(と思う)。
しかし、その一方で月額の利用者負担額も上がった。母の状態が改善した時に、「区分変更申請」をして、要介護4に下げてから入居申し込みをしても良かったのかもしれない、と思う時もある。いやしかし「5」だから入居できたのかもしれない。こんなふうに、いつも私は悩んでいる。その時良かれと思ってもその後その決断に苦しむこともある。親の状態も気持ちも日々変わる。介護者として二人の命を守る責任を感じながら、介護保険とともに父と母とともに過ごしたこの3年間。親の気持ちに寄り添いたいと思ってずっとやってきたが、「誰も、私の気持ちはわからない」という母の言葉のとおり、満点にはほど遠かった、と今思う。
次回は「在宅か施設か」で悩んだ話を紹介する。(本誌・大崎百紀)
※週刊朝日 2022年12月2日号