また、大阪府立大の山野則子教授の調査によると、全国の児童相談所が性的な問題が「増えた」「少し増えた」と回答した割合は、緊急事態宣言時期が6・7%だったのに対し、宣言解除後、学校再開後にはその割合が15・7%に増えている。家族の監視下で出てこなかった虐待が、学校再開後に把握されるようになったとみられている。
さらに「児童の自殺の深刻化にも影響を与えた」と、末冨教授はみる。厚生労働省の統計によると、20年度の小・中・高校生の自殺は499人。19年度の399人から100人(25%)も大幅に増加した形だ。
子どもを持つ母親に対するダメージも大きかったようだ。東京大の山口慎太郎教授らの分析によると、一斉休校以降、子どもがいない女性と比較して、末子が小学生または未就学である女性は、就業率が低下、休業率が上昇したという。しかも、就業率は9月になっても回復していなかった。
末冨教授はこう語る。
「貧困世帯では休校で給食がなくなったり親が職を失い1日1食など厳しい状況が続き、子どもの体重が減ったり、栄養失調になったりしています。一斉休校によって子どもの居場所がなくなったり、人とのつながりが失われたりすることで、十分なケアが行き届かず、自殺の増加につながった面もあります。また、親にも大きな負担を強いました。臨時休校するにしても、食の保障や虐待リスクがあれば居場所を確保するなどの取り組みが求められています」
これから冬にかけて、感染者数が増えていくことも懸念されている。変異株により生徒・児童の感染拡大も心配されるなか、昨年以上に厳しい学校運営となるかもしれない。
「新しい学びに取り組んできた自治体や学校ではオンライン授業や課題学習、分散登校といった柔軟な組み合わせで多様な学習を実施するノウハウが蓄積されており、学びを継続することができると思います。他方で、対面指導にこだわり対応が遅れた自治体や学校も多いと見ています。感染が拡大するたびに、対応に苦慮するのではないでしょうか。学びの格差がよりいっそう出てくる可能性があります」(末冨教授)
子どもの安全、安心を確保しながら、いかに学びを継続させるか。現場の力が問われている。(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)