睡眠中に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」。この病気の怖さは眠気やいびきだけでなく、高血圧や心臓病など、さまざまな病気につながるリスクだ。睡眠時無呼吸症候群の背後に潜む病気や早期発見の重要性を専門医に聞いた。
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睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、眠っている間に呼吸が止まることをくり返す病気だ。「大きないびき」を連想するこの病気には、さまざまなリスクが潜む。
まず、無呼吸をくり返すことによるからだへのダメージと、仕事や生活への影響が挙げられる。呼吸が止まると全身に十分な酸素が送られず、「低酸素状態」になる。本人は自覚がなくても一晩に何十回も無呼吸をくり返すと、からだは深刻な呼吸困難の状態に陥る。
それにより交感神経が過剰に刺激され、からだがずっと緊張にさらされ深い睡眠がとれなくなるため、寝ても疲れがとれず、睡眠をとるほど疲労が蓄積されていく。RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック院長の白濱龍太郎医師は「からだへの負担は想像以上に大きい」と話す。
睡眠不足や疲労の蓄積により集中力や注意力が低下すれば、仕事の効率が下がる。さらに、居眠り運転や機械の操作ミスなどによる重大な事故につながる危険もある。
■重大な事故に加え病気のリスクも
「アメリカの研究ではSASのドライバーは交通事故を起こす確率が2~3倍高くなるという報告も。ドライバーに限らず、例えば銀行マンでも不注意から取引でミスをし、何億円もの損失を出す可能性もあり、仕事や生活でのさまざまなトラブルにつながるリスクが考えられます」(白濱医師)
多くの病気を発症・悪化させるリスクもある。SASと病気の関係については多くの研究がおこなわれており、高血圧や糖尿病、心臓や脳の病気などを合併するリスクが高いことがわかっている。
「英国の医学誌では、SASを放置すると数年後に高血圧症を発症するリスクが3倍になると報告されています。また、日本循環器学会による睡眠呼吸障害のガイドラインには、心筋梗塞や不整脈など循環器の病気とSASの合併は偶然起こるものではなく、明らかな因果関係があると記載されています」(同)